久保野孝太郎「ウキフカセ秘伝」

久保野孝太郎(くぼの・こうたろう)

1969 年生まれ。がまかつフィールドテスター。関東勢初のG 杯グレ優勝を果たしたほか、G 杯チヌでも準優勝とトーナメントシーンで輝かしい戦績を残し、全国の磯を舞台に活躍。

久保野孝太郎「ウキフカセ秘伝」

現場でよく見る“釣れない”人への提言①

準備するマキエの量も撒き方も不十分です!

マキエは魚を寄せるためのもの!
準備量や撒き具合の不足は効果半減!

久保野孝太郎「ウキフカセ秘伝」画像1

エサを売っている立場なのでお店で接するお客さんはもちろん、釣り場でも他人のマキエが気になって仕方ありません。立派な職業病です(笑)。で、その際に私がチェックしているのは、内容や質よりも量についてです。そしてそのマキエをどんなペースで撒いているのかも気になりますね。

印象としては「用意する量が少ないし、あんまり撒かないんだなぁ……」でしょうか。接客時にこういうことを言うと「商売上手だねぇ」と言われてしまうので自重していますが、私の基準で考えると明らかに足りません。私の感覚が絶対ではありませんし、釣行時の予算が限られていることは理解できます。とはいえ、ある程度の量を投下しないことには思うような結果が得られないのも事実です。我々が相手にするのは警戒心の強い野生の生物。マキエによる誘引力の大小はモロに釣果に反映されます。マキエに反応するのはグレだけではありませんしね。

マキエの多寡によって起こりうることは図のとおり。まずはこの関係性を理解することから始めましょう。たくさん用意すればいい、とにかくドカドカと撒けばいいという単純な話ではありませんが、マキエはウキフカセ釣りにおける“弾薬”。

尽きてしまったらほぼゲームオーバーです。裏を返せば、量があればそのぶんだけ可能性は増えます。

私が十分量のマキエを持ち込むのは“足りなくて後悔する”のがイヤだからです。せっかく時間と労力を費やすのですから、結果を得て満足して終わりたい。「釣れない時間も釣りの楽しみ」という考え方もありますが、どうせなら釣れたほうが楽しいに決まってますからね。

久保野孝太郎「ウキフカセ秘伝」画像2
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久保野孝太郎「ウキフカセ秘伝」画像3
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久保野孝太郎「ウキフカセ秘伝」画像4
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上でも述べましたが、釣り場でほかの人のマキエを見てみると「用意している量が少ないなぁ」「撒く回数が少ないなぁ」と感じることが多くあります。「そもそも用意する量が少ないのでチビチビ撒こうとしている」のか「チビチビしか撒かないので少量しか必要ない」のか。ヒヨコが先かニワトリが先かの議論になってしまいますが、いずれにしても相関関係にあることは間違いありません。

上図は取材時に計測したデータを元にした、マキエ消費のシミュレーションです。あくまで試算ではありますが、実際の使用量におおむね合致しています。私は比較対象者よりも3倍の量を同じ時間で撒いていることになりますね。これで両者の釣果が同程度だったとしたら、後者はよほどの熟練か強運の持ち主です。

技術は一朝一夕に身につきませんが、マキエは誰でも用意できますよね。ですから、技術が未熟な人ほど十分量のマキエを用意して、しっかり撒いてほしいのです。実際には費用がかさみますし、初めのうちは撒き切るのも大変ですが、マキエと上手に付き合えるようになれば自ずと釣果もアップしますよ!

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カップ容量16cc のヒシャクに押し付けるようにしてす くったマキエ量はおよそ20g。これを目安に試算した。

久保野が考える“釣れる”人になるための宿題!

マキエの投入回数を増やしてみよう!
いつもと同じ量のマキエを短時間で撒き切ろう!

納竿時間に残ったマキエを捨てていたら、急にワラワラと魚が出てきて一面に乱舞……。そんな経験がある人は多いことでしょう。この現象はそれまで撒き続けていた蓄積と考えることもできますが、「短時間で大量のマキエが投下されて一気に魚のスイッチが入った」という可能性が高いと思います。

マキエは魚を動かすことができる重要な武器ですから、“撒き方”を変えれば“効き方”も変わるのです。

私からのアドバイスとしては、仕掛け1投ごとに撒くマキエの回数を増やすことから始めましょう。1投に1撒きだったのを3撒きに、3撒きを5撒きに変えるだけで、海中での効き方や魚の動き方が変わってきます。ただ、撒く回数を増やしたぶんだけ消費するペースも上がりますから、今までと同じスケジュールで竿を出そうとすれば総量を増やす必要に迫られます。
懐事情でそれが難しいようなら、同じ量を短時間で使い切って釣果を出せるように頑張ってみましょう。良い時間帯にマキエ切れでギブアップ……となる可能性はありますが、それも経験と考えてください。漫然と撒くのではなく、“効く”撒き方を意識する良い機会になると思いますよ。

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マキエ投入の回数を増やすことで魚の動きや釣れ具合が変わることもしばしば。意識的に“撒く”練習をしてみよう。