久保野孝太郎「ウキフカセ秘伝」

久保野孝太郎(くぼの・こうたろう)

 1969 年生まれ。西湘・江ノ浦にある『小田原マリンターミナル』店主。関東勢としては初のG杯グレ優勝のほか、G杯チヌでも準優勝とトーナメントシーンで輝かしい戦績を残し、全国の磯を舞台に活躍。がまかつフィールドテスター。

久保野孝太郎「ウキフカセ秘伝」

魚種で異なるハリの傾向① チヌ用バリの特徴

「ヒネリ」と「長軸」が伝統 エサに合わせた色も多彩

荒磯から漁港、時期によっては河川内まで入り込む高い適応力と雑食性の強さから様々な釣り方・エサで楽しまれているチヌ釣り。ハリのセレクトも釣り方やエサによって多少の違いが見られますが、ウキフカセ釣りにおいては「チヌバリ」のほぼ一択と言ってよいでしょう。

「チヌバリ」の特徴としては、「軸が細くて長い」「ヒネリ」の2つが挙げられます。特に「ヒネリ」はグレ用のハリにはほとんど採用されていませんが、チヌ用のハリでは定番の仕様です。これはチヌの口の構造が大きく関係しています。下の写真を見ればわかるように、チヌの口内には上下のアゴに半球状の硬い歯が並んでいます。仮にチヌが付けエサをくわえてもこの部分にはハリ先が立ちませんから、スッポ抜けてしまう可能性が高くなります。しかし、ヒネリが入ったハリは、ハリ先がクチビルなどの柔らかい部分をとらえやすく、刺さり込むきっかけを作ってくれます。仮にハリをのまれても歯でハリスを切る魚ではないので、ハリ掛かり率を上げる意味でも効果的です。ただし、潮が速い場所で付けエサが回転したり、強度面ではヒネリなしのハリに劣るのも事実なので、嫌う人がいることも付け加えておきましょう。

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チヌの口内には甲殻類や貝類の殻を押しつぶすための硬い半球状の歯が点在している。この部分でハリ先が滑ってもクチビルでハリ先が立つよう、チヌバリには「ヒネリ」が採用されていることが多い。また「ヒネリ」があることで柔らかい部分で確実にハリ先が立つので、ハリごと飲まれてもフッキング率の向上が期待できる

また、付けエサをコマセに紛れ込ませて食わせるグレ釣りと違い、コマセに寄ったチヌに対して大きなエサを付けてアピールするのがチヌ釣りのセオリー。そのため、長軸でシルエットが大きいハリが選ばれる傾向があります。

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近年はコーンや黄色い練りエサが多用されるようになり、チヌバリにもイエローカラーが採用され始めている

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しなやかに曲がり込んで仕掛けにかかる負荷を軽減し、曲がり込んでからは反発力によって魚を浮かせるのが竿の役目。仕掛けとのバランスを欠いていればそのいずれの役割も果たせぬまま無念のバラシ……となるのは必至

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独特な口内構造と雑食性が強い生態に合わせて生まれた「チヌバリ」がこの釣りのスタンダードフック。「ヒネリ」「長軸」の形状が大きな特徴

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左の2つ(チヌR チヌイエロー、ファインチヌ)は伝統的な「チヌバリ」に近い形状。それに対して右の3つ(丸呑チヌ、ナノチヌふかせ、チヌエース)はどちらかと言えば進化形。それぞれに良さがあるが、まずは「チヌバリ」系のハリを使い込むのがベター

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この記事は磯・投げ情報9月号の記事を再編集し掲載しております。