敷地翔太朗
1993年生まれ。釣り好きの父親の影響で、フカセ釣りは小学校の低学年から始める。中学生になると地元の高知県興津や愛媛県武者泊で口太グレを狙うようになる。高校卒業後は釣具店に勤めて釣行回数が激増し、沖の島・鵜来島のデカ尾長釣りに魅了され、松田稔のDVDや書籍を参考に独学で腕を磨く。自己記録は2024年4月26日の沖ノ島の高場で獲った67㎝。これまでに仕留めたロクマルは2ケタを超えるがまかつの彗星
5月上旬、敷地さんが巨大尾長グレを狙って釣行したのは宿毛市の沖の島・鵜来島の海域。巨大尾長の聖地として知られ、敷地さん自身、足繁く通う全国屈指のフィールドである。ここでは大物を求めて挑戦を繰り返す敷地さんの釣行の模様、釣りのスタイル、尾長グレの魅力などについて紹介しよう。

沖の島・鵜来島の魅力
前述した通り、四国西南部、高知県宿毛市の沖に浮かぶ沖の島、鵜来島は、巨大尾長グレが狙えることで知られている。敷地さんのホームグラウンドでもあるが、どんなフィールドで、どのような魅力があるのだろうか?

「やっぱり水面直下まででっかい尾長グレが浮いてきて、70㎝とか、僕が見た感じでは80㎝あるんじゃないだろうかというような魚が背ビレを出すくらいのところまで出てくるというのはあまりないことだと思います。それがすぐ喰うかといえばぜんぜん喰わんし、マキエはパクパク喰うのにサシエだけ残ることが当たり前のようにあって、それをなんとか釣っちゃろ(釣ってやろう)というのでこの海域にハマりました。昨年、自己記録の67㎝が釣れたのですが、それでも満足できない……、じゃないですけど、もっとでっかいのを(でっかいのがいることを)知っているじゃないですか、だから今度はそれを釣っちゃろと思うから止められないですよね」

60㎝を優に超す巨大尾長グレが水面下で乱舞する様は圧巻。なかには70㎝、あるいはそれ以上のサイズが確認できるのだから夢がある。見えていてもなかなか口を使ってくれないという難易度の高さにフカセ師たちはのめり込む。
1日目沖の島「東のハナ (高場) 」で尾長を手中に


朝イチは尾長グレが見えない状況だった
初日は「東のハナ(高場)」に渡礁。海面付近ではタマメ(ハマフエフキ)の群れが確認でき、マキエを打つと海中はイスズミがエサを拾うものの、尾長グレの姿は見えない状況が続いた。
それでも状況が好転することを願って釣り続けていると、少ないながらも尾長グレの姿が見えるようになったが、簡単には口を使ってくれなかった。
次第に風が強くなるなか、尾長グレの動きを確認しつつマキエ、サシエの投入場所やタイミングを変えながら反応をうかがう。

少ないチャンスをものにして本命を掛けた!
待望のアタリに即座にアワセを入れると、ロッドが気持ちよく絞り込まれた。
尾長特有のシャープな引きに冷静に対処し、玉網に滑り込ませたのは45㎝クラスの本命だった。
「やっと釣れた……。このぐらいのサイズでも引くね~、水温が高いから」と敷地さん。
タフな状況ながら尾長グレの動きを見極めて1匹目を手にした。

厳しい状況下で手にした貴重な尾長グレ

気持ちよく竿を曲げて2匹目を追加
その後も風、波の影響で釣りづらく難しい状況が続いたが、敷地さんは集中力を切らすことなく状況を読み取りながら手返しを繰り返した。
そして1匹目と同サイズのグレを釣り上げて初日の釣りを終えることになった。
2日目鵜来島「水島二番チョボ」で本命を狙う
2日目は鵜来島へ釣行。「水島二番チョボ」に渡礁し、大型の尾長グレを狙って釣りを開始した。
この日は昼前から雨と風が強くなる予報で、「昨日は9時の弁当船くらいからよくなったのでそれまでは辛抱といきたいところですが、今日は天気がよろしくない……。できれば早めに(尾長に)出てきてほしいですね」と敷地さん。


磯に上がって準備を整える敷地さん
その後も海中の様子を確認しながら釣り続ける。たまにマキエに反応したグレが上がってはくるものの、圧倒的に数が少ないという。魚の動きに合わせてマキエやサシエ投入のタイミングなどに微調整を加えていく。するとほどなく、アタリを捉えて即座にアワセを入れると『アテンダーⅢ』が美しい弧を描く。難なく浮かせて抜き上げたのはイサキ。
前半はイサキが連発する状況となったが、これが喰わなくなったときがチャンスではないかという。釣り続けているとイサキも学習するため、いずれ触らなくなるそうだ。

魚の動きを見ながらマキエやサシエを投入するタイミングを調整

最初はイサキが頻繁にアタってきた
「それまで悪くても、次の1投でウキが入るときもあります。昨日の「東のハナ(高場)」でもそうですが、魚の動きが変わらないのに急にサシエを触るようになることもあるんです」と敷地さん。その見極めは難しいが、好機を逃さぬように高い集中力を保ったまま手返しを繰り返していく。
風波を克服して貴重な1匹をキャッチ
しばらく釣り続けていると次第にイサキのアタリが減ってきた。「釣れるなら今くらいからかな」と敷地さん。その言葉通り尾長グレの反応が出始める。

「あまりやりませんがウキの浮力を少し抑えます。それでもマイナス浮力ではなくて0(ゼロ)くらいにします。風波がけっこうあるじゃないですか。ウネリならいいのですが、風波の場合、山(のよう)になってくるじゃないですか。それで仕掛けが張って緩んで、張って緩んでを繰り返してしまいます。(波の)山が来た時にウキがシモって、山がないときはウキが浮いてくらいのイメージでやってみようと思います。フォールで落ちきるまでに喰わすといっても、細かい波はやっかいです。なぜウキを入れないか(沈めないか)というと、細かいアタリがわからなくなるからです。尾長は(エサを)放すことを知っているので、放される前にアワセを決めなければならないと考えると、浮力が少し高めのウキのほうが入ったら間違いなくアタリだと判断できます。ウキが沈んでしまっていたら、アタリか波かどちらだろうという状態になります。そうならないためにも本来なら浮力が高めのほうがいいですね、今の状況を除いてですが……」
風波が邪魔をする難しい状況のなかで、今回はウキの浮力を抑えて対処した敷地さん。
その狙いは的中し、ウキを消し込む明確なアタリが出た!

『アテンダーⅢ』が美しい弧を描く
そして即座にアワセを入れる。
「よっしゃ~、これはグレや」シャープで力強い引きに本命であることを確信。「それほど大きくはないですけど、1匹目ですから大事にいかないと」と丁寧にやり取りを繰り返す。

尾長との攻防は足元に寄せてからも気が抜けない
「グレってウキが見えてから3回も4回も突っ込んでいくんです。でもウキが見えたら結構、弱っていますからここから慌てることはありません」と、じっくり浮かせて玉網に滑り込ませたのは45㎝クラスの尾長。喰いつく前に2、3投空シャクリとなったが、魚の動きが変わったと感じていたそうで、マキエとサシエがバッチリ合ったときにヒットした貴重な1匹だった。

待望の1匹目は45㎝クラス
タフな状況を克服してサイズアップ
「仕掛けを上げたら魚が浮いてきて、仕掛けを入れたら魚が沈んでいる気がします。仕掛けを入れなければそれなりに見えていますからね。仕掛けを投入したら一気に魚が下がっていくんです。そんなに嫌なのかな……。最初のマキエをして、仕掛けを投入するまでは魚が出てくるのに、ウキ(仕掛け)を入れると急に魚が出てこなくなる。ベタ凪ならウキの着水音とかが気になると思うけど、このくらい荒れていれば気にならないと思うんですけど」と敷地さん。
ただ深いところにはキツかグレかは分からないが魚はいるという。

雨が降り、風も強くなるなかで集中力を切らすことなく本命を狙う

「マキエは沖に向かって流れていくのですが、なぜか魚が出るのは手前ばかりです。あまり沖では魚が出ていません。だいたい沖から突っ込んでくる太いやつ(良型)がいるかなと思って狙っているのですが、今日は沖からくる魚がいないですね。どちらかというと手前のほうが魚はきちんと反転している気がします」
ここでアタリを捉えた敷地さんがすかさずアワセを入れると強烈な引きが伝わりロッドが大きく絞り込まれた。下へ下へと突っ込むトルクのある引きに耐えて、なんとか体勢を立て直し、慎重に浮かせてくる。
大物なのは間違いないが本命の引きとは違う様子。海面に浮かび上がったのは大きなアオブダイだった。
その後、尾長はマキエに反応して浮いてくるものの、サシエに触らなくなった。仕掛け投入のタイミングを変えながらチャンスをうかがっていると、手前に良型の姿が確認できるようになる。さらにしばらく釣り続けていると、再び口を使い始めた。
「たまに上がってきよるけどな」と敷地さん。海中の様子を観察しながら手返しを繰り返していると待望のアタリ!アワセを入れると竿が気持ちよく絞り込まれた。

魚の動きをよく見て戦略を練る
「これはグレでしょう」とその引きから本命と確信した敷地さんは力強い引きに冷静に対処。
ゆっくり浮かせてから玉網に収めたのはサイズアップとなる50㎝に迫る尾長グレだった。

力強い引きを堪能して寄せてくると、本命が海面に姿を現した

2匹目は50㎝に迫るサイズ
魚はいるものの数が少なくてタナが深いうえ、東の風が強く雨も降る厳しい状況のなかで、敷地さんは45㎝クラスと50㎝に迫る尾長グレを攻略。大型は出なかったもののタフな状況を打破して本命を手にした釣技、集中力は見事としか言いようがない。
今回の釣行も敷地さん自身の糧となり、新たな大型尾長攻略のモチベーションになるのは間違いない。これからも若手トーナメンターの挑戦は続く。
敷地翔太朗の尾長攻略スタイル
ここからは今回の釣行を通して使用したタックルや敷地さんの釣り方について紹介しよう。
尾長グレ攻略タックル

今回、敷地さんが準備したタックルは、ロッドが『がま磯アテンダーⅢ』の1.75号5.3m(2日目は5m)、リールがレバーブレーキ付きスピニングリール3000番、道糸がナイロン2.75号、ハリスがフロロカーボン2.75号、ハリは『A1 MシステムEX 尾長 速攻』の8号。
ハリスにはタングステン製のくわせオモリをセットし、ウキは6-6サイズ(2日目は5-5)の円錐ウキを用いた。
使用するハリと使い分け

「今シーズン『A1 MシステムEX 尾長』シリーズが発売されました。沖の島本島周りの二並島で10枚ほど釣れた日があり、そのときに新しい『A1 MシステムEX 尾長』と従来のモデル『A1 Mシステム タイプ尾長』を交互に使ってみたのですが、新しいハリのほうが釣れる魚が圧倒的にデカかったです。釣れればほぼ50㎝オーバーみたいな状況でした。もちろん従来のモデルがダメというわけじゃないですけど、やはり喰い込みなどが違います。プライベートでは従来のモデルを使って、渋いときとか、魚が触らないというときは『A1 MシステムEX 尾長』を使うようにしています。常に『EX』を使うのではなく、ここという勝負どころで使用するといいと思います」
竿の長さの使い分け

「初日の「東のハナ(高場)」とは違って「水島二番チョボ」は足場が低いのですごくやりやすいです。「東のハナ(高場)」は足場が高いので道糸を置けないのが問題でした。今日(2日目)の「水島二番チョボ」は竿も5mで十分いけます。とはいえ、『アテンダー』は軽いので、5.3mだから操作しにくいということはありません。やはり30㎝とはいえ結構違いがあり、掛けてからのやりとりにおいては、同じ号数でも5.3mのほうがラクかなと思います。道糸の操作などの所作の部分においては、5mのほうがやりやすいですね。また、基本的に風が吹く日は5mを使うことが多いです」

ロッドは『アテンダーⅢ』。釣り場の状況、当日のコンディションを考慮して使い分けている
狙うタナの決め方

「まずは魚を見て1ヒロくらいまで浮いてくるようならそこから始めますが、魚が上がってくる頂点にサシエを持っていきたいですよね。基本的には魚のタナです。魚よりも深く入れることはないかと思います。この釣りはまずは海を見てやる釣りです。魚が不意に浮いてきたらすぐにウキ下を調節しますが、固定仕掛けなら上げ下げすることですぐに対処できます。たまに海面に背中を出すくらい浮くこともありますが、このときはウキ下を20~30㎝にするのではなくて、喰わすときの張りが重要になります。1ヒロもしくは半ヒロで張りを作る感じで釣ります。やはり多少の遊び(ゆとり)も必要だと思います。基本的には1ヒロなら1ヒロ、1ヒロ半なら1ヒロ半で釣りますが、回収のときにサシエが魚よりも下から上がってきていたら(返ってきていたら)深いと判断できますし、魚よりも上のタナであれば大きめのボイルをハリに付けて海中で見てから決めることもあります」

まずは海中をよく観察して魚の動きを見ながら釣ることが重要
活性が高くなる時間帯

「いくらいい日でもやっぱり多少いい時間、悪い時間はあり、ずっといい状況が続くことはなかなかないです。一日中アタリっぱなしというのはなかなかなくて、1日やってもいいときで1時間くらいじゃないでしょうか。今回も初日の半夜釣りが終わる間際、6時から6時30分頃は毎投というくらい魚がサシエを触っていたのですが、あれは間違いなく尾長だと思います。そんな感じで1日やってもいい時間帯は限られています。本当に一瞬かなと思います。そこでいかに集中して1匹釣るかが重要になります」
釣りやすい天候に関して

「やっぱり秋の時期とか、シーズン初期とか、水温が上がってきたときなどは曇っているときのほうがいいような気がします。一番ダメだと思うのが晴れたり曇ったり、晴れたり曇ったりを繰り返すような天候で、晴れた瞬間に魚が一斉に沈むんですよ。それならずっと晴れているほうが魚は安定して出てきてくれるように思います。カモメが飛んだときにもグレは沈むのですが、やはり上を意識しているのでしょう。これまでの経験上、背ビレが出るくらい浮いてきたのは風が吹いたときとか、雨が降っていたときなど、あまり天気のよくないときのほうが多いですね」
魚の喰うタイミング

「魚が喰うタイミングというのはだいたい分かります。今、マキエと重なったとか、そういったことが分かってきたら必然的に触りそうなタイミングというのが分かってきます。理想的なのはそこでアタリが出ることですね。仕掛けを放る(投入する)タイミングも人それぞれだと思います。マキエを打ってすぐに放るときもあれば、魚が出てから放る人もいるでしょうし、仕掛けに『ハリコミ小次郎』(くわせオモリ)を打っているかどうかでフォールスピードも変わってきます」
尾長グレの狙い方
アタリを待つときは?

「基本はオープンベールです。パツパツに張りを作っているのでちょっと抜きながら探るようなイメージなのでオープンベールのほうがいいですね。はじめの突っ込みなどでラインを抜くときなど、レバーで出すよりも早く抜くことができるじゃないですか。そのため魚も外れたんじゃないかと油断するような感覚になり、動きが止まるんじゃないでしょうか」
基本的な釣り方(手返しについて)

「僕の釣りを見てもらって分かると思うのですが、ずっと(仕掛けを)置いといて釣れるもんじゃないというか、ずっと置いているから確率が上がるというよりは、マキエと仕掛けがズレたらすぐに回収して投げ直すのですが、ここは気をつけたほうがいいと思います。他の方の釣りを見ていると、マキエと仕掛けがズレているけれどそのままにしているのを目にします。それでは時間が経過するほど確率が悪くなる気がします。やっぱり魚がサシエを触るときは、放りこんですぐとか、10秒、20秒の世界だと思います。僕としては仕掛けが立ったら上げる(回収する)というイメージです。キャストした後もウキだけをずっと見るのではなく、下の魚の動きであったり、マキエの状況などを交互に見たほうがいいかなと思います。ウキばっかり見ていると目も疲れますし、しんどいですよね」

仕掛けを流しっぱなしにしてはヒット率は下がる。海中をよく確認しながら手返しよく攻めることが大切
ロマン、魅力あふれる尾長グレ。
みなさんも雄大で美しいフィールドへ出向き、モンスタークラスとの駆け引きに挑んでみてはいかがだろう。

敷地さんの自己記録67㎝の巨大尾長。こんなモンスタークラスに挑んでみてはどうだろう