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がま鮎 POWERSPECIAL Ⅴ 引抜荒瀬in球磨川 実釣レポート

球磨川屈指の荒瀬「二俣の瀬」の上段にある「梨木の瀬」。豪雨によって多くの瀬が変わったが、この激流は姿を大きく変えていない

CHAPTER01
「尺のオトリで尺が抜ける。しかも速く、簡単にね。端的に言えばそんな竿だよ」

その川に棲む一番大きな鮎を釣る。それが野嶋玉造さんのスタイル。生き様と言ってもよい。72歳を過ぎた現在も瀬に胸まで立ち込んで、全身を使って鮎を掛ける。 どんな川であっても良型を循環させ、最大魚が潜むポイントを見極める。そこは白波の逆巻く激流であり、深くて押しの強い流れである。 まさに「川に挑む」という釣りになるが、痛快な手応えを求めて価値ある1尾を掛けにいく。一生忘れない感激を味わうため、一期一会の鮎釣りを真剣に楽しむのである。

そんな野嶋さんにとって球磨川は究極の舞台といえる。火の国の大河と巨鮎に魅せられ四半世紀は経つ。毎年9月の彼岸ごろ、シーズンの締めくくりは球磨川で迎えるのだ。そして、2021年は特別な思いで訪れた。2020年7月の豪雨で定宿だった川口商店も被災し、家族のような間柄の大切な人を亡くした。この災害から1年を経て、ようやく気持ちに整理がついた。

野嶋

家族のような人を亡くしても、俺は球磨川を恨んじゃいない。球磨川漁協の組合長とも話をした。ぜひとも全国の釣り人に鮎が復活したことを見せてほしいと言われたよ

人吉、球磨村、坂本、八代と水害の爪痕は流域の各所に残っている。一方で昨春は河口に例年の10倍という数の天然鮎が遡上しており、汲み上げた鮎も含め放流は約261万尾と発表された。

そして野嶋さんは球磨川に立った。田嶋剛さん、長谷川哲哉さんら愛弟子も一緒だ。手にする竿は「がま鮎パワースペシャルⅤ引抜荒瀬」。

球磨川は圧倒的な水量だ。9月下旬になれば岩盤と大岩が織りなすフトコロ深い流れに300g、400gといった巨大なアユが縄張りを張る。半端な道具で取ることができない川と魚が相手である。落差の大きな激流に立ち込めば、下れないシチュエーションも多い。掛けた魚が尺鮎であってもその場で引き抜くほかない。 野嶋さんが長年球磨川を釣りこなしてきたのは、がま鮎パワースペシャルとの歩みでもある。初代から無茶を可能にしてきた竿なのである。野嶋さんは言う。

野嶋

何が大事かって、抜く時に人間の腕の力だけじゃあ絶対ダメなんだ。竿の力がないと、そこで掛かった魚を水面まで浮かせることができない。プロレスラーが力任せに鮎を浮かそうとしたって胴が入っていくだけ。腕の力じゃねえよ、あくまでも竿の力が必要。それができるんがパワースペシャル。初代から変わらない、この竿の思想だよ

どんな剛竿を持っても野嶋さんの釣りは繊細だ。必要以上に大きなオモリを使わず、野アユの反応が乏しいタフな条件下もオトリを引き殺すようなことはほとんどない。しっかりとサオを寝かせながら、目印は上下左右に滑らかに動いている。いつ掛かってもおかしくないオトリの泳ぎを引き出す。また、前に立ち込むだけではない。一歩下がって手前も丁寧に探る。猪突猛進ではなく、冷静にアユの付き場を読み解く。そのうち「来たんべえ」という声が響き渡り、竿が満月を描くのである。

今回の釣行でも野嶋さんは尺鮎を当たり前のように掛けた。そうして取った尺鮎もためらいなくハナカンを通し、次の魚を掛けにいく。圧巻だったのは尺オトリに29㎝が掛かった時だ。強い当たりがなく、オトリの位置を変えようと浮かした途端、引抜荒瀬10mにグン!っと重みが乗った。「掛かってんべえ」と楽しそうに川を下りながら、態勢が整う位置でぐっと踏ん張った。そして野嶋さんの二の腕くらいの太さの2尾を空高く抜き飛ばした。上流に返した鮎をソフトに着水させ「笑っちまうよ! いつの間に掛かってんだから」と目を細め、流しダモにすくい込む。そのようすは何とも軽やかだった。

野嶋

引抜荒瀬は尺のオトリで尺を掛けても抜ける竿だ。俺みたいな70過ぎの年寄りだって簡単に浮かせられる。
この魚が答えだんべ(笑)

もちろん野嶋さんは非力ではない。が、限界まで力を入れてやり取りをしていない。魚を浮かして抜く仕事は、竿がきっちりしてくれる。それは年配者にとっても心強い力になる。つまり球磨川のような夢舞台で、年齢や性別を問わず勝負しやすい一本になる。

「竿を硬くすりゃあ抜ける竿ができるか?全然違うよ。元までしっかり粘って反発する竿が必要なんだよ」

尺のオトリに29㎝が掛かる。それを軽やかに抜いてみせた野嶋さん

今回のパワースペシャル5はデザインにも余念がない。代々パワースペシャルのシリーズで受け継がれるイメージカラー、パープルをベースに、鮎釣り師が心躍るであろう大鮎のハミ跡を模したデザインがほどこされている。ちなみにロッドを置いた石にある親指大のハミ跡は尺と思しきサイズ。球磨川ではこうした陸バミが各所で見られる

「いい鮎だんべ。重てえよ」

CHAPTER02
「荒瀬9mは荒瀬竿とは思えない持ち重りのなさ。25cm以上がコンスタントに掛かるなら急瀬より荒瀬がいい」

田嶋

荒瀬だけど自分の中では急瀬のBタイプみたいな位置付けの竿。どういうことかと言えば、軽いんさね。前作と比べても断然軽く感じる。先が軽くて持ち重りがしない。特に荒瀬の9mは普段使いしたくなる。本音を言えば25㎝以上が掛かる川なら急瀬より荒瀬を持ちたい。それくらい使いやすい

そう話す田嶋剛さんは球磨川で引抜荒瀬9mにパワー穂先をセット。全長が10㎝短くなるチューブラー穂先は、魚の重みが胴に乗りやすく、抜きがよりスムーズになる。速く取り込めるから、テンポのよい釣りを展開しやすい。そして結果からいえば今回の釣行で田嶋さんは30.5㎝と30.6㎝、2尾の尺上を釣りあげた。どこにそんな鮎が付くのだろうか?

田嶋

何日か竿をだして分かったのは、胸くらいの水深の流心際がいいってこと。でっけえのが残っている

田嶋さんは荒瀬の中段に立ち込んだ。流心部は20号のオモリを付けてようやくオトリが入るような激流だが、その芯の脇であれば6号のオモリでもねじ込める。パワー穂先はしっかりとした張りがあり、大きなオモリも操りやすい。繰り返しオトリを通していくと、田嶋さんの手元にゴンと鈍い衝撃が走る。掛かったのだ。簡単には下ることのできない荒瀬の中で田嶋さんは腰を落として耐え、しっかりと竿を曲げる。するとあっけないほどの速度で鮎が躍り上がった。

田嶋

こっちが予想している以上の速さで抜けちゃうから、後の処理が追いつかなくて慌てることがあるくらい。それと耐久性の安心感は凄いもんで、のされ角度になっても不安なく思い切り曲げ込める

田嶋さんにはこんなシーンもあった。瀧花の瀬の上流で、養殖オトリでスタート。いきなり掛かったのが尺鮎。オトリが軽いせいか竿を立てた瞬間に掛かり鮎がピョンと飛び出したのだ。しかし、寄せてみると30.5㎝もあった。球磨川の荒瀬でこんな風に尺鮎が取れるのはパワースペシャル引抜荒瀬の真骨頂といえるだろう。

荒瀬のド真ん中に立ち、流心の壁を打つ。すると鈍いアタリが来た後で目印が上っていく。次の瞬間、一気に竿をもっていく強い疾走。田嶋さんは竿を思い切り絞る

張りのある竿なので振り子で上流に返した後のコントロールも秀逸

CHAPTER03
「オトリを引けば、穂先と穂持ちが曲がって泳ぎをサポートしてくれる。荒瀬の10mでこの操作感は経験ないね」

谷川哲哉さんは競技志向が強い。オトリの泳ぐ感触、その操作感をとても大切にする。今回の球磨川では引抜荒瀬10mをメインに使用し、その操作性に驚いた。

長谷川

はっきり言って前作の荒瀬10mはオトリを操りきれなかった。まさに剛竿という感じでね。言い方が悪いけど10mの棒を持っているみたいで、オトリを引くと突っ張ちゃう。それが五代目の今作は穂先と穂持ちがオトリに合わせて曲がってくれる。ちゃんとオトリを泳がせながら引ける。長くても胴ダレせずシャキッとしている。荒瀬竿、しかも10mとは思えない使い心地に感動しました

穂先は標準装備のテクノチタントップがお気に入り。長谷川さんはオモリを使っても2.5号まで。竿を寝かせてオトリを押さえ込みながらも、しっかり泳がせる釣りを身上にする。釣行時の球磨川は渇水気味。ハミ跡はあるし野アユも確実にいるのだが、簡単には追ってくれない。

長谷川

渋い状況だからオトリの力を借りないと掛からない。オトリがうまく泳いでくれた時に答えが出る。ちゃんと操作できる竿じゃないと難しいんですよ

球磨川「渡」にある相良橋上流。その瀬肩の深トロを探っている時だった。やや下竿気味に入れたオトリを対岸のカケアガリに向かって引き上げていく。オトリの動きを感じながら扇状に泳ぐようにテンションを調整する。目印がスイスイと動き出した瞬間、ガツーン!と目印に衝撃が走る。胸まである水深の流れである。踏ん張りにくい石組ゆえ態勢を崩した長谷川さんの顔がズボッと沈んだ。それから泳ぎながらも竿を絞り、魚についていく。よい足場にたどり着いたところでタメに入る。竿のパワーが勝ち、背掛かりの黄色い鮎が宙を舞った。

長谷川

操作性もいいけど、曲げて待っていれば勝手に2匹のアユが飛んでくる。球磨川の大鮎相手にオートマチックに抜けるんだから、やっぱり凄い竿だと思う

そう言って長谷川さんは体高のあるアユをぶら下げ相好を崩した。

こうして野嶋さんたちの鎮魂の球磨川釣行は幕を閉じた。球磨川に戻ってきた、たくましい鮎と遊ぶ姿を天国にいる球磨川のみんなに見せたい。そんな特別な思いを抱いた釣行だった。そして究極の舞台で強く激しい大鮎に挑める「がま鮎パワースペシャルV」の実力を証明できた旅になった。

穂先まではシャンとした張りがあるも、先端は流れに応じてオトリを支える柔軟さもある。「ちゃんと泳がせながら引ける竿だ」と長谷川さんは言う

長谷川さんが手にするのは、肩が盛り上がって体高のある球磨川らしいオス

野嶋さんの定宿だった川口商店は2020年7月の豪雨で被災。その跡地には祭壇が建ち多くの献花がある。野嶋さんは静かに合掌した後で「人生は出会いと別れの繰り返し。どうにもなんねえことがあるよ。ただ俺たちと球磨川の鮎は元気だってことを天国のみんなに見せられたらいい」と溢れ出す涙を拭い、竿を手にした

がま鮎 パワースペシャル5 製品情報
「要」シリーズに大鮎ファン待望のメガサイズが登場!

刺さりがよく太く大きな鮎もしっかりとキープする「要」シリーズにイカリ用の『G-HARD V2 メガ要(11号、12号)』 とチラシ・ヤナギ用の『G-HARD V2 メガ要チラシ(10号、11号、12号)』がラインナップ。 重くて石を掻きやすい大バリだが、硬く強靭な素材G-HARD V2を採用していることでハリ先が鈍りにくい。 今回の釣行で田嶋さんと長谷川さんは12号をメインに、3本イカリと2本ヤナギをセット。ナノスムースコートにより刺さり込みがよく、 12号の広いフトコロは球磨川育ちの分厚い魚体をがっちりとキープした。

11号と12号の線径は0.68㎜の軸太。ハリが伸びる、開くことはまずない強靭な大バリだ