遠投の必要性と南流の攻略法

南康史(みなみ・やすし)

 1969年生まれ。G杯チヌで前人未到のV4を成し遂げたトップトーナメンター。ホームグラウンドは岡山県と広島県。ゼロウキを用いたスルスル仕掛けが武器。がまかつフィールドテスター。

近年、チヌ(黒鯛)のフカセ釣りにおいて遠投釣法はなくてはならない釣技のひとつにあるが、なぜ沖を狙わなければならないのか。前人未到のG杯チヌ4連覇を果たした南康史さんに、必要性と遠投に特化したブラックトリガーの秘話を明かしていただいた。

遠投の必要性と南流の攻略法

遠投に特化して開発が進められたブラックトリガー。その経緯とは…

開発経緯

 「ブラックトリガーは楽に遠投ができる竿、現代の釣りに合った調子を目指して開発を進めました。近年のチヌのフカセ釣りは、重たいウキが主流になりつつあります。そんなウキを思い通りに狙ったポイントへキャストするにはどうすればいいのか試行錯誤を重ね、ヒントになったのはカゴ釣り用の竿でした。カゴ釣り用の竿と同じような作り方をすることで軽い反動でキャストが可能になり、さらに従来の竿よりも穂先を短く太く、張りをもたせることでコントロール性の向上に繋がりました。まさに遠投に特化した理想の竿に仕上がったと思います」

遠投の必要性と南流の攻略法

沖のかけ上がりや潮筋まで遠投することで、釣果は上向く

沖を狙う優位性と、狙うポイントの見つけ方

 「夏場や秋口はどうしてもエサ取りの活性が高く、手前を釣っても釣りにならないことが珍しくありません。私のホームグラウンドである瀬戸内海ではフグやベラ、サヨリといったエサ取りが多いため遠投が必須になります。まずは比較的釣りやすい底が砂地のフィールドを選び、狙うポイントとしては渡礁する磯や堤防によって様々ですが、仕掛けの届く範囲にかけ上がりがあることです。かけ上がりがあることで、そこに居着くチヌを狙える上に回遊してくるチヌも狙うことができます」
 「かけ上がりの見つけ方は、磯へ渡る前に渡船から確認したり、渡船の魚探を見たりして判断しています。もうひとつ釣りやすい条件としては、潮通しがいいポイントを選んだ方がいいですね。本流と引かれ潮がぶつかって潮目ができるようなポイントであれば可能性は高まります」
 「これからの時期は、やはりエサ取りが多いので釣り始めから遠投で探っていきます。距離でいうと30メートルラインから狙っていき、エサ取りが少なくサシエが残るようであれば20メートル、15メートルと手前にポイントをシフトさせていきます。逆に30メートルラインでサシエが残らないような状況であれば、40メートル近くまで遠投します」

遠投の必要性と南流の攻略法

大遠投するときは、オーバースローキャスト

オーバースローで投げるときとキャストのコツ

 「私の場合、ブラックトリガーを使えば大半はサイドスローで狙ったポイントまで仕掛けを投入することができますが、それ以上沖を狙いたいときや大遠投したいときはオーバースローでキャストします。投げ方のコツとしては、ウキの重みをしっかりと竿の胴部に乗せて振り込み、反発力をいかして60度ぐらいの角度でピタッと止めます。そうすることで竿の反発力が働いてくれるので楽に遠投することができますね」

遠投の必要性と南流の攻略法

上から振り込みにくいときはサイドスローキャスト

サイドスローが必要なとき

 「基本的にサイドスローで投げますが、特に背後に木や岩といった障害物があって上から振り込みにくいときに多用します。60度ぐらいの角度にきたタイミングでピタッと止めて竿の反発力で投げるのはオーバースローと変わりないですが、大きな違いはサイドスローの場合、サシエを手に持って振り込むことです。慣れるまでは難しいかもしれませんが、感覚をつかめば意外と簡単に投げることができます」

遠投の必要性と南流の攻略法

遠投だけでなく、魚を掛けてからの調子にもこだわったブラックトリガー

魚を掛けてからの竿の特性と調子

 「ブラックトリガーは遠投だけに限らず、魚を掛けてからの調子にもこだわりました。竿のバット部(胴部)まで粘り強く曲がるため、じっくりと溜めていけば竿の反発力で浮かせることができます。分かりやすく言うと、胴に重みが乗ることで、魚が暴れずスムーズに寄ってくるので安心して勝負ができるといった感覚ですね。がまかつの磯竿特有の・きれいな曲がり・が継承されているのでやり取りが楽しめる竿になっています。

遠投の必要性と南流の攻略法

時代に合った遠投釣法を身に付けることで、チヌとの出会いは大きく変わる

総評

 「遠投ができるようになれば、狙える範囲や引き出しが増えるのでよりフカセ釣りが楽しくなります。プライベートの釣りはもちろんですが、トーナメントにおいても役立つ釣技だと思っているので、ぜひ遠投釣法を楽しんでください」

写真/細田亮介