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渓流釣り 増水の攻略法 渓流釣り 増水の攻略法

長谷川哲哉 写真

長谷川 哲哉 Hasegawa Tetsuya

アユ、渓流のスペシャリスト。
渓流はヤマメをメインに、渓流・本流の両方をこなす。
長めの竿を好み、過度な細糸は使わず、0.3~0.4号をメインに使用し、軽めのオモリで底波を捕らえるスタイル。
アユは数釣りも、激流の大アユ釣りも得意で、G杯争奪全日本アユ釣り選手権で入賞歴あり。
がまかつテクニカルインストラクター。
群馬県在住。

圧倒的な大渇水を
想定していたら、
まさかの大増水

釣り上げた渓流魚を水面で持つ様子を、水中から捉えた写真。

「水がないからね」

 渓流釣りの取材依頼を長谷川に打診したところ、川に水がないという。30年ぶりの記録的な大渇水を予感させるダムの貯水率と全国あちこちの河川の異常渇水。テーマは、この渇水の攻略になるだろうと、話していたら、取材直前になりウィンディーの降水予想でまさかのピンク色。大雨予報である。取材日前日は大雨で取材当日は晴れ予報。
「今で30㎝増水だから下流は無理でしょう。上流に行きましょう」

「下流域1m増水だから釣りは無理。支流の双六川に行こう」

えっと取材班が、いま、現地入りしましたが、すごい増水で釣りがどうとかじゃなくて、川岸に近づくのも怖い感じで、もちろん、コーヒー色の濁流です。

コーヒー色の濁流で荒れている川の様子

「(画像をみて)あー、すごいね。でも、山が豊かだから、雨が止めば引くのは早いよ。た、たぶん、大丈夫」

 取材前日の金曜日、夕方。前入りした取材班が長谷川に報告すると、想定していたよりはるかに水が高いものの、なんとかなるだろう。少なくとも2日後の日曜日には回復する。最悪、釣りするのが難しいようなら、岐阜から富山に走ろう(笑)とスマホを切った。正直、リスケジュールするべきだったと後悔していた。

高原川の風景写真

 この日、訪れた川は、岐阜県高原川。渓流大国・群馬に住む長谷川が、毎年、必ず、訪れるというくらい惚れ込んでいる川だ。キレイな魚と素晴らしい魚影。行き届いた河川管理に、アベレージサイズも大きいとくれば、片道3時間半の道のりも遠いものではなくなる。

「調子がいい年だと、30匹、40匹はふつうに釣れる。と、いいたいところなんだけど、2025年はあんまりよくなかった。通い始めて、はじめてひとケタ釣果だった。5匹だったかな」

 それでも一度いい想いをすれば通ってしまうのが釣り師のサガ。

「地元群馬は、川によっては成魚放流がけっこう多いんだよね。魚体の色とか、尻尾の形とか、がっかりすることもある。高原川の魚はきれいだよ」

 4月の取材。本来の取材テーマは、標準的な水量でイワナ・ヤマメの釣り分けにしよう、などと話していた。だが、この大増水では、いかに釣りを成立させるかにテーマをシフトせざるをえない。しかも、毎日様子を見ることができない遠征先での試行錯誤である。

 どうでもいいことではあるが、長谷川と渓流の取材に同行させてもらうのは、これで4回目。姫川―白濁り増水。子吉川―濁流増水。高原川―平水。そして、今回、高原川―濁流増水である。まったくもって、長谷川という男は雨男なのである。

「増水するロケのたびに顔をあわせる撮影クルーに心当たりが、私にはあります」

 えっと、週末を狙ったかのように天気が荒れる昨今、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

本流筋はギリギリ
釣りができそうな
水色だったが……

 さて、当日。下流を予定していた集合場所をいくつかの大支流が合流する前の上流地点に変更し、6時半の集合時間を目指して移動していたら、長谷川の車とすれ違った。

「ずっと川を見ながら下って来たんですが、ちょっと厳しいですね」

 川の色を見て渋いというか、釣りにならなさそうな状況だと判断した長谷川。

「流葉温泉側の山田川の流れが茶色に濁っているんで、あれよりは上でやらないと」

 この日初めて川を見て意気消沈気味な長谷川と違って、前日のまっ茶色な濁流と圧倒的な水量の川と比較したら、なんだか魚が釣れそうな、少なくとも魚釣りの真似事はできそうな川の様子に、意気揚々としている取材班。夜中にもそれなりに雨が降り、12時間後でこの落ち着き具合なら、少なくとも2日間の滞在中に釣りは成立しそうだ。何せ、前日は、流入する枝沢でさえ激流で、釣りをする場所すらなさそうな雰囲気だったのだから。

 ところで、濁っていると魚は喰わないのだろうか?

緑色っぽく、笹濁りしている川の写真

「濁りにもいろいろな種類があって、そもそも笹濁りと呼ばれる多少白く濁ったくらいは渓流釣りではベストとされる。濁流の泥濁りならともかく、茶色いくらいの濁りなら案外、釣れないわけではない。ただ、水量が多すぎるとか、小枝や枯れ葉などの流下物が多い時がよくない。増水し始める瞬間と、あとは、だんだん水位が落ち着いてきている最中だね。この増水だと、3日後か4日後、Xデーが来るでしょう」

 つまり我々の取材の翌日か、翌々日ということになる。

春の増水の落とし穴、
雪代が生む低水温

「ヤマメ・イワナは、目で餌を見て近づいて食べるんですね。匂いよりは。そうすると糸が見えづらいという意味ではメリットですが、視界が悪くなっている分、餌自体が見つけづらい。だから、流すコースとかレンジは、いつもよりタイトに正確に流す必要がある。それよりも気になるのは、雪代かな」

雪代とは、雪解け水が川に流れ込む現象。比較的、高い標高とはいえ、訪れたのは4月。桜が咲いたか、散り始めたかくらいの景色を目にしていた。周囲には雪がない。

「温泉が多くて、地熱が高いんだよね。だから、早い時期も案外、河原に雪がないのが高原川の特徴」

雪の残る、北アルプスの山々の風景写真

だが、北アルプスの名峰、槍ヶ岳や焼岳を間近に控える立地である。2500m級、3000m級の峰に雨が降れば、蓄えた雪が溶けだし、流れ込む。水温が冷え込むのは想像に難くない。

 高原川と蒲田川が合流するよりも上流の、蒲田川のポイントに到着した。水量は高いが、かろうじて渓流魚の付場はあるように見える。

「釣れるとしたら、ここしかない」

山に囲まれ開けた瀬と、遠方の河岸を歩く長谷川とスタッフ

 もしもここで釣れるなら、他のポイントでも釣れる可能性があるが、このポイントで釣れなければ、ほかのどこに餌を入れても釣れないだろう、と。絞られた瀬ではなく、開けた瀬の瀬尻で、水深はひざ下から腰下程度だろうか。見ているのは、流速である。
だがアタらない。

「こういう増水時に、ヤマメとイワナは行動が違うんだよね。ヤマメは定位していた近くの岩に身を寄せる。自分の場所に執着していて、なるべく動きたくない。一方、イワナはけっこう幅広くどこまでも動き回るというか、すごい浅瀬の流れの緩い場所で盛んに捕食したりするんだよね。だから、いきなり立ちこむんじゃなくて、まさかこんな場所にいるの?というような岸際の浅い場所にも餌を入れてみた方がいい。どのみち、普段の流心付近は速すぎて釣りにならないんだから」

河岸から竿を振る長谷川

岸際、よさげな流れ、念のため流心わきの速い流れ、巻き返しと、いろいろ入れてみるものの、アタリは皆無。

「喰わない濁りじゃないよ。水量も、場所を探せば魚がとどまれる流れはちゃんとある。でも、アタリが無い」

 エビのようにピンピンと跳ねる細長い川虫ピンチョロをメインに、ミミズやブドウ虫を試すも、アタらない。

川虫・ピンチョロが何十匹と収められている箱の中

「濁りはともかく、小枝とか葉っぱとか流下物がまだまだ多いんだよね。こうなると流れてきたゴミを避けるモードが解除されない。餌を喰うタイミングじゃないのかもしれない」

 そうして、川底の石を拾いひっくり返す長谷川が声を上げる。

「冷たいっ。これ、相当、冷たいよ。ビリッとくるもの。ヒラタとか川虫はいるけど、冷たすぎるというか、急に冷えすぎたね。これじゃあ喰わないか」

 仮に水温が2度、4度だったとしても、その水温で安定しているならば渓魚は喰う。だが、それまで渇水・好天で、桜も咲くような陽気の中、急に雪解け水が大量に流れ込めば、水温は急激に下がる。

「仮に3度も下がるようじゃ、たまったもんじゃないだろうね。急な変化に魚は弱い」

 午前中いっぱい丹念に釣り歩いたが、蒲田川の流れからはアタリを捕らえることはできなかった。

「午後は川を変えよう」

橋がすぐそばにある渓流で、アタリを待つ長谷川の後ろ姿

 新たな入渓場所を探し、上流から下流へと下りながら川を見ると、どんどん濁りが増していく。そうして一大支流の双六川との合流まで下がった。高原川の水は茶色。だが、双六川の色はどうだ。透明といって差し支えないほど澄んでいる。もちろん、水位は高い。高いといっても、びっくりするほど水位は落ちている。というのも、前日、川に近づけないほどの増水だと写真を送ったのは、この場所だったからだ。

「まあ、本流があの調子だし、今日、釣りになるのはこの川になるだろうね。しかも、上流に行くと、渓が深いのね。だから、開けている川幅のエリアというと、そんなに長くない」

 谷が深い場所は、川幅が狭まって、深く速くなるというか、そもそも立ち位置が確保できない可能性もある。

「この3カ所で仕上げるしかないべ」

 長谷川が目をつけたのは、瀬の中段にある大岩の絡むポイント。古くはIⅭパターンと呼ばれた石裏の巻き返しに餌を振り込み、なじませると流心脇の流れを流した。だが、大岩によって分けられた手前の筋を流しても沖の筋を流しても、アタリはない。首をかしげながらも、ポイントをもう一度、じっくり観察し、流れの速さを見きわめる。低活性を想定し、ひと回り緩い流れの場所に目を付けた。

釣り上げたイワナを網に収めようとする長谷川の後ろ姿

大岩が流れを完全にさえぎっている場所に振り込む。小さなオモリを装着した仕掛がふわりと着水する。目印が流れることなく、徐々に水面に近づいていく。3つつけられた目印の一番下の目印が、水面に届く位置まで来ると、ゆっくりとしっとりと目印が流れ始めた。それは秒速30㎝が適正な水勢といわれるヤマメの好む速度と比較すると、明らかに遅い。秒速15㎝といったところだろうか? その岩裏の緩流帯をゆっくりゆっくり流れると目印に小さなアタリが出た。一寸の間を置き、鋭いアワセが決まる。

「イワナかぁ。まあ、あの位置だとそうだろうね。きれいだよね。ここのイワナは。斑点の色とか質感とか」

両手に包み込まれているように収まっているイワナ

 増水中の緩い流れ、低い水温。もし、ギリギリの状況だとしても、イワナなら口を使う。

「パターンがわかったと思うよ」

 水量が多い中で、口を使える魚がいる場所はかなり限定的だ。50mほどの距離に3つある大岩のうち、真ん中の岩の前に立ち、1匹目のイワナと同じ釣り方で攻める。次の段に落ちる寸前に差し掛かったところでアタリ。22㎝ほどの渓魚がタモにおさまった。

「おぉ、ヤマメだねぇ。すんごいきれいだ。ここ数年で見たヤマメで一番きれいかもしれない」

底面を川につけた網の中で泳ぐヤマメ

銀毛していないしっとりした肌には、尻尾まできっちり並ぶパーマークが並び、うっすらと紅色が刺し、黒点の少ない背中はモスグリーン。精悍な顔つきは、この清らかな水に育まれた天然のヤマメを髣髴とさせるには十分な容姿をしていた。

「ヤマメがあの位置にいるんだもん。だいぶ、寒いんだろうね」

 撮影の間、水につけていた手を赤くしながら、長谷川が語る。とはいえ、ヤマメも口を使う状況であるとわかり、ペースが上がる。ポイントとして成立する大岩絡みの3カ所を丹念に攻め、合計5匹。

「釣りになるのがこの川しかない中で、しかも、瀬のいい場所にはいない。まあ、こんなところかな。明日は、また、ぜんぜん違う展開になるかもしれないよ」

平水レベルに
落ち着いた水量と
喰い渋るヤマメ

渓流の岩場に立ち、竿を出す長谷川

翌朝、びっくりするくらい水が引く双六川をみて、驚く撮影クルー。

「これでもまだ、平水ではないんだろうけど、水温という条件を除けば、最高の水量だよね。盛期なら瀬の速い流れにどんどん入ってくると思う。本流の高原川もだいぶ収まっていたしね。あっちはまだまだ濁ってたけど」

瘦せた山やダム河川では、なかなか増水が引かなかったり、濁りがとれなかったりする昨今だが、あれほどの大雨でもさっとおさまる素晴らしい自然がまだまだ日本にも残っているようだ。前日よりもやや下流のポイントに入った。

「あれ?アタんないね」

 水深のある1級ポイントの瀬頭で手前から丁寧に流してアタリが出ない。ポイントの中間にある均一な流れのトロ場で目印に違和感が出たように見えた。その目印が下流に移動し、落ちついたところで、震える目印をみてアワせた。

体を大きく逸らし、右手に持った竿で魚とやりとりする長谷川
右手に竿、左手に釣り上げたヤマメを持ち、笑顔を見せる長谷川

「いいサイズだよ」

 ギラギラと水中でローリングするヤマメはなかなかのボリューム。上流にロッドを倒し、ヤマメのあばれを抑えながら、優しく取り込む。27㎝ほどだろうか。キレイな魚体のヤマメを手にした。

「朝は急に水温が上がらないし、活性が低い。ヤマメのいる目の前に通して、アタリは出たんだけど、ガンとかスッと沈むようないいアタリではなくて、モソッとくわえた感じだったよね。ヤマメは餌を喰いに前に出て、そのままバックするように元のポジションに戻る習性がある。その戻る動きに合わせて、ロッドを送り込んでやって、居心地のいい場所に戻った瞬間にアワせた」

 ??? アタリがあればすぐにでもアワせる、という常識とは明らかに違う技術。それをこともなげに繰り出す長谷川。

「寒くて動きが鈍い、活性が低いというときに、早くアワせちゃうと口先でくわえているだけで、ハリ掛かりしなかったり、ハリが外れやすいケースがあるんだけど、目印の動きがそれっぽい感じの動きだったからさ」

 あるいは、星煌峰という最高の感度の渓流竿に支えられた技だろうか。

「あれ以上、待っちゃうと、今度は吐き出されるか、吐き出す動きで目印がガチャガチャ動くんだけど、そうなるとまた掛からなかったり、バレたりしやすくなる。ほら、あんなに待ったのに、口にハリ掛かりしてるでしょ」

 違和感なく喰わせ、定位ポジションまでくわえさせる技。ちなみに、長谷川の使う糸は決して細すぎはしない。初日は0.4号、二日目は0.3号だ。

「大増水で、50㎝のイワナとかが喰っちゃったら、0.4号はないと厳しいなぁと思ったんだけど、水も落ち着いたし、釣れる感じからしたら、せいぜい40㎝のイワナかな、と。それなら0.3号で十分取り込める」

軽量なオモリでなじませ
水中糸のたるみを作り
喰い波をとらえる技

水面と沈む直前の仕掛け

喰ってくる最大魚にあわせて糸の太さを選ぶ。とはいえ、0.1号や0.2号を使うことはほぼない。それでも、長い時間、くわえさせることができるのは、小さなオモリでなじませる技術によるものだ。

「仕掛を沈めるのに、流れを利用するんだよね。目印の位置に対して、竿先が下流側にあるイメージ。そうすると仕掛が下流側にノの字のたるむ。そのたるんだ部分に水流が当たり、押さえ込み、沈みこませる。そうすると軽いオモリでも仕掛を底波に入れて、捕らえることができるんだよ」

流し方の説明イラスト その1

それによってオモリは点在する石の頭をかすめつつ、時折、転がるように流下させることができる。

「この流し方ができるのとできないのでは、流れの筋のとらえ方が変わっちゃう。例えば、重いオモリをつければ、糸を張っていても、底の流れにいれることができる」

 実際に、ちょうどなじんでいた仕掛にオモリを追加して実演してくれた。一見、同じように流れている風に見える。何が変わったのだろうか?仕掛が立ちすぎている?

「まず、一番、大きな違いは、流れなりに流れずに、流れを横切ってしまう事。その動きが出てる時点でスレてるヤマメは喰わない。喰っても、無理やり喰わせてるから、瞬間的なアタリになりやすくて、外れやすい。ということは、喰わせれる距離が短くなるし、何より竿の長さより遠いポイントを流すことができない」

 ちょうどいいオモリでなじんだ状態を作り出すと、竿で無理に引かない限り、なじんだ状態をキープし流れなりに下流へと流されていく。これは竿の2m、3m沖へと投入された場合でも再現される。自然に流れる距離が長く、チャンスが増える。

流し方の説明イラスト その2

ちなみに、誘いをかけたりすることがあるのだろうか?

「流している最中に誘いを掛けたりすることはないかな。ただ、流し終わりの仕掛の位置を大岩の頭に設定して、吹けあがるようにして自然な誘いにするとかは、よくやるよ」

 一等地で良型のヤマメが釣れたことで、次を期待したのだが、このポイントは打ち止め。上の段の小場所や次の大場所をやるもののアタリがない。

「小さいヤマメやイワナが喰ってこないのが不思議なんだよね。底質の問題かな?人頭大だったり、一抱えあるような岩が底にゴロゴロしているのが理想なんだけど、ここは砂だったり、岩盤だったりするよね」

 岩らしい岩がない。そうすると、隠れる場所がない。それはイワナだけではなく、ヤマメにとっても好ましくなく、例えば鵜に喰われやすくなる。3時間ほど粘ったものの、追加することはできなかった。

「移動しようか」

瀬の中の小場所から
次々とヤマメを
拾うことに成功

口に鈎がかかったままのヤマメを、水中から左手で掬い上げるように持っている写真

水量・濁りが収まりつつあり、もしかしたら竿が出せるかもしれない本流筋に後ろ髪を引かれながらも、カレンダー撮影の水色の映えを優先し、前日と同じ場所に入った。水量は半分くらいに減ったような印象を受けるほど、まるで別の景色になっていた。

「こうなっちゃうと、こういう場所を意識するよね」

 そういって、水中に沈む岩の向こう側を、岩スレスレで流すとヤマメが喰ってきた。

「プレッシャーの高い人気河川だからね。水量がない状況では身を隠せる場所を意識した場所に魚がつく」

岩が点在する川で釣りをする長谷川

次の1匹は瀬の終わりのもう次の段に落ちてしまいそうな、通常ならとっくに仕掛をピックアップし終わっているであろう場所で1匹。さらに、普通なら仕掛を入れる事がない、流す距離が2mもないような竿抜けの小場所で1匹と、メインの本流筋とは違う場所でコツコツと釣果を重ねる。

右手に竿、左手に釣り上げたヤマメを持ち、笑顔の長谷川

「竿抜け? というか、いまの水量でヤマメにとって過ごしやすい場所だよね。流速が合っていて、隠れる場所がある」

 人主体ではなく、魚主体で物事を考える長谷川には竿抜けという概念がないようだ。

「ただ、まだ、盛期には2週間くらい早い。もう2週間もたったら、瀬の中の速い流れにどんどん入って、餌を追うだろうね」

 そのときこそは、支流ではなく本流で竿を出したいと、次の再訪を約束して高原川水系双六川をあとにした。