長谷川哲哉
tester │ Tetsuya Hasegawa
全国の大鮎河川に足をのばして腕を磨く。激流の釣りを得意としながらもチャラ瀬やトロ場などオールラウンドにこなすテクニシャン。G杯鮎をはじめ競技会でも活躍。
最高の引き感覚と
粘りとパワーの新調子
最高の引き感覚と
粘りとパワーの新調子
様々な状況に幅広く対応できる5タイプの調子をラインナップする競技系ロッドのハイエンドモデル「がま鮎競技スペシャルV8」。競技スペシャル8代目の今作で、初めて登場する調子が「胴抜急瀬」だ。
「細身肉厚設計の胴調子で引き感覚がすごくいい。左右にブレることなくしっかりオトリがついてくるので狙いの筋を外すことなく引けますね。川の中を点ではなく面でとらえていろんな筋をきっちり釣れるので、釣りこぼしがありません。魚が掛かるとしっかり胴に乗って粘りますから保持力がすごい。抜き性能も高く、竿全体が曲がることででっかい魚でも軽く感じますね」
とは開発担当の長谷川哲哉。
「基本的に九頭竜川のようにフラットな川は引ける範囲が広いので、胴抜急瀬のメリットがより生かされると思います。それでは石の大きい川には向かないのかというとそうではありません。大きな石の横は流れが速くなるのですが、先調子の竿だと穂先が入ったり戻ったりしてオトリが泳ぎやすいところに逃げることがあるんです。それに対して胴抜急瀬は、穂先が一定量曲がって強く引いても穂先はそのまま胴が曲がるので、穂先が暴れないんですよ。穂先が暴れなければオトリも逃げませんから、石の横をしっかり通すことができる。ただ、石がガチャガチャ入った場所やピンポイントをテンポよく釣るなら先調子が扱いやすいですね」
こうした特徴を踏まえたうえで、どのように釣りを組み立てれば釣果が伸びるのだろうか。まずは石の小さい川の場合だ。
オトリを沖に出すときも大事なのは野鮎が掛かるオトリのスピード
「自分の立ち位置から竿1本分くらい下流にオトリを送り出します。このとき自分のまっすぐシモではなくて、斜め45度より少しシモになるぐらい。ここから竿を沖に倒してカミに引いてオトリを斜め前に出していって野鮎が掛かる筋を探します」
まっすぐシモまで出さないのには大きな意味がある。
「自分のまっすぐシモまでオトリを送ってしまうと、オトリが沖に出ていくスピードが速くなりすぎるんですよ。それでも反応する野鮎はいるんですけど、経験上オトリの動きが速すぎると反応が悪いことが多い。日によって、川によって、ポイントによって野鮎が追って掛かるオトリのスピードがあってですね、速すぎてもダメだし遅すぎてもダメ。そのときに掛かるスピードを見つけることが大事なんですが、シモにオトリを送りすぎるとそれができない。斜め45度より少しシモぐらいに出したほうが竿を動かすスピードで調整しやすいんですね」
水中糸をつける量でオトリの動きは制御できる
流れに対して竿が直角(90度)になるところまで引き上げ、オトリが穂先の延長線上(川と並行のライン)まで出たら、上流へ向けて引き始めるが、ここでとても大事なことがある
「穂先のラインから沖にオトリが出ちゃうと、竿とオトリの角度が開き気味になる。そうすると野鮎がハリに触れても掛からなかったり、浅掛かりになってバレる率が高くなるんです。どういうことかというと竿の弾力が効かないのでハリ掛かりが悪くなるんですね。実際にオトリを引くときはカミ竿45度から90度の間にするのですが、この間の角度だと竿の弾力がしっかり効いてきっちりハリが掛かります」
穂先のラインよりオトリが沖へ出ていきそうになったときはどうすればいいのだろうか。
「これは竿の角度で止めるのではなく、川の中に入る水中糸の量で調整します。竿をより倒して水中糸をたくさん水につけるとオトリの横への動きが制限されます。逆に竿を少し立てて水中糸が水につかる量を減らすと沖へ出ていく。だから、穂先のラインよりオトリが沖へ出ていきそうになったら、若干竿を寝かせて水中糸を余分につけて横への動きを抑えるわけです」
水中糸をつける量でオトリの動きを制御する方法は、釣り始めにシモからオトリを沖へ出すときにも使えるので覚えておこう。
「穂先のラインにオトリが出たら、そこからオトリを上流に引いていきます。竿の角度は90度より少しカミ竿が引きやすいですね。その角度を保ったまま、自分自身が半歩ずつ上流に動く。竿で引くのではなく体で引きます」
竿で引こうとするとオトリの位置が横にズレるので、狙いの筋を外してしまう。竿の角度を保ったまま自分が動くことで筋をキープするのだ。
こうしてある程度の距離を引き上げてアタリがなければ最初の地点にオトリをさし返すが、今度は少し前に出てオトリを斜めに出して引き上げる。これらの動作を繰り返して野鮎が掛かる筋を探すとともに、速く引いたりゆっくり引いて野鮎が反応する速さを探るのだ。
石の手前、奥側、頭をきっちり通せるかどうかが大切
次に石の大きな川ではどうだろうか。
「石の大きな川は、石の手前、奥側、頭(上流側)にオトリをきっちり通せるかどうか。そこを外すと全然掛からないなんてことになりますからね」
鮎は石を釣れといわれるように、石色のいいところ、すなわち明るく光った石に照準する。釣れる石色については黒い石がいいことが多いものの、白い石がよかったり黄色い石がよかったりと河川によって変わってくるので、それを知るのは大切だ。
「狙いたい石の手前の筋でオトリをなじませてから、まずは石の手前を釣ります。具体的にいうと、石の小さな河川同様に、手前の筋の若干シモにオトリを送り出して、竿を沖側に倒してオトリを沖へ出してやる。石があることによってオトリは止まりますから、そこから自分が上流側に動いて徐々に引き上げます」
石の手前は釣りやすいが、奥側はどう釣ればいいのだろうか。
「石の手前の筋にオトリがいる状態で、竿を1mぐらい立てるんです。するとオトリが底を切ってふわ〜っと少し持ち上がりますから、すかさず竿を倒して石の向こう側に穂先を持っていってやるとオトリは石を越えて向こう側の筋に入るんですよ。こうすることで石の奥側が狙えますし、石を越えるときに石の上も釣れるんですね」
竿を立てる高さは石の大きさに合わせればよく、石が大きければもう少し高くすればいいそうだ。
「次に石の頭の釣り方ですが、石を越えたオトリが向こう側にいます。そこで一度オトリを止めて、今度は体で引かず竿で少し上流側に引き上げてやると、オトリがスーッと石の頭に戻ってくる。これで石の頭が釣れます」
要は竿を引き上げることで穂先の位置が手前になり、その延長線上にオトリがくるということ。石の頭に直接オトリを入れようとしても左右に流されてしまうが、向こう側から手前に入れることで、きっちり狙えるわけだ。
「ひとつの石の手前、上、奥側、頭を釣っていく。それの繰り返しで瀬の中の石を順番に釣っていくと釣りこぼしがなくなります」
高感度の竿を通して伝わる違和感はチャンスを知らせるオトリのサイン
石の小さな川、大きな川での基本的な組み立てが分かったところで、釣果を伸ばすコツについて。
「胴抜急瀬はとても感度がいいので、引いてくるときに違和感を感じることがあります。重たくなったり少し引き込まれたり小刻みに震えたり。そうしたシグナルはオトリになんらかのアクションがあったときのサイン。たとえば近くに野鮎がいたり、追われたり、石の横に入ったり。野鮎につかれるとオトリは石と石の間の溝みたいなところに沈みたがるので少し引き込まれます。石の横は流れが速くなって抵抗がかかるので重たく感じます。そうした変化があれば、その近くでオトリを止めて野鮎が掛かるのを待つわけです」
野鮎の反応が悪くて掛からないときはどうすればいいのだろうか。
「対応は2パターンあってしばらくオトリを止めておいた方が掛かるときと、何らかのアクションをオトリが起こしたときに掛かるときがあるんですね。なので、オトリを引かずにずーっと止めておいたり、若干強めに引いてみたりと変化をつけることです」
こんなに長く止めておかないと掛からないのかというときもあるので、待つ時間はとても大事と長谷川。それで獲れる鮎があるかどうかで最終釣果は変わってくるからだ。
野鮎が掛かる筋が分かればシモへの送り出しは時間のロス
逆に野鮎の追い気が強すぎて掛からないこともあるという。
「一回強く追われたりしつこくくっつかれたりすると、オトリは野鮎がいるところにいかなくなるんですよ。ケラれたり掛かったけどバレたりしてオトリがイヤな思いをしたときもオトリは野鮎の近くにいきたがらない。こうなると循環が途切れてしまって釣果が伸びません。オモリを付けてオトリを無理矢理入れたり逃げないように動きを制御したり。ケラれたあと少しやって掛からないときは、オトリを替えるとすぐに掛かることが多いですよ」
循環を途切れさせるもうひとつの原因はバラシだが、胴抜急瀬の十分な粘りとパワーがそれを軽減してくれる。
「先調子の竿はのされ気味になると野鮎がばちゃばちゃと暴れてバレることがありますが、胴抜急瀬は胴から曲がってぐいぐい寄せてくるし、のされ気味になったときでもじっとがまんしていれば少しずつ寄せてきますからね」
そして最後にこう付け加えてくれた。
「小石の河川でも大石の河川でも、釣っているうちに野鮎が掛かる場所というか掛かる筋が分かってくると思うんですね。そうすると、シモにオトリを送り出して沖に泳がせる動作はムダになってしまう。掛かる筋に直接オトリを入れてその筋だけを狙っていくと効率がよくなりますよね。横に出す時間がいらなくなるので、確実に獲れる数は増えると思いますよ」
撮影で訪れた岐阜県益田川では、こうして筋を絞り込みバタバタと野鮎を引き出していったのだった。