ノーマル、背バリ、オモリのローテで
瀬釣りで獲れる野鮎はもっと増える
田嶋剛が教える
誰でも数が釣れる方法
田嶋 剛
tester │ Tetsuya Hasegawa
小学生の頃から鮎釣りに親しみ18歳で本格的にのめり込む。G杯鮎では何度も表彰台に乗っている実力者だが、田嶋といえばやはり激流。激流の釣りにおいては右に出るものはいないスペシャリストである。論理的で分かりやすい解説に定評がある。
“THEがまかつ”と呼べる
最高の仕上がり
「名川が多い岐阜県の中でも体高と重量のある大鮎が釣れるのが益田川の魅力ですね。今年は8月のお盆頃から25cmが釣れ始めて、台風の雨で水が出る前は27cm、200gが出ていたんですよ。ただ、渇水続きだったのが、この出水でどうなるのかですけどね」
瀬釣りのスペシャリスト田嶋剛が益田川を訪れたのは、台風15号が日本の東海上に抜けたあとの2025年9月上旬、野鮎にスイッチが入る引き水のXデーかと期待が高まるタイミングだった。
JR高山線の鉄橋上流の段々瀬に入った田嶋が取り出したのは、競技系ロッドのフラッグシップモデル「がま鮎競技スペシャルV8引抜急瀬90」。
「僕の中でこの竿は“THEがまかつ”と呼べる最高の1本なんですよ。操作性と感度がすごくよくて、抜き性能もすごいし軽い。それでいて粘り強くてパワーも十分。鮎竿に求められるすべての要素を兼ね備えています。
カラーリングもすごくきれいだし、グリップのデザインも新しくてかっこいい。竿先から必要部分にパワークロスシステムを採用することでネジレを抑え、掛かり鮎に頭を振らせることなくスパッとキャッチングも決まります。瀬の中でテンポよく数を釣るのに最適な仕上がりですね」
そんな竿に合わせるのは、天上糸からサカバリまでがセットされた複合ラインの完成仕掛、メタブリッドⅡ(みえみえイエロー)0.2号のパーフェクト仕掛。
「メタブリッドⅡは比重が1.9と軽めで水をよく拾ってくれるのでオバセがしっかりかかり、オトリが尻尾をよく振って泳ぎます。瀬の釣りでも泳がせ釣りでもオールマイティーに使える。中ハリスがワンピースだから、オモリや背バリを使ってもトラブルがなくて使いやすいんですよ」
仕掛の準備を終えた田嶋は、セオリー通り瀬肩からアプローチした。
ノーマルでスタートしオモリを付けて数を伸ばす
ノーマル仕掛で流れのヨレにオトリを入れて順番に探っていく。開始間もない午前9時に1尾目がヒットするも鈎外れ。3分後にガツーンと竿が引き込まれた。
竿を寝かせたままぐっとためてしっかり鈎を食い込ませる。スッと竿先が戻った瞬間に竿を立てるとそのまま鮎が飛んできた。タモに吸い込まれたのは22、23cm。あっという間の取り込みだった。
これをオトリに替えて、うっすらと頭の見える石と石の間を探っていく。ほどなくしてギューンと竿が絞り込まれた。撮影を意識して豪快に竿を曲げ込んだあとスパーンとタモに同型が収まった。一連の流れるような所作はすこぶるかっこいい。
オモリを付けてひとつ下のタナから3尾目と4尾目を引き出したあと、オモリを追加し5尾目を取り込んだところで小休止。瀬釣りで数を伸ばすコツを聞いてみた。
仕掛を替えればポイントが増え
必然的に釣果がアップ
「まずはノーマルでオトリが入るルートを通して、次に背バリで入るルートを通します。
そのあとはオモリ0.5号で入るルート、1号で入るルートといった具合にオモリの号数を替えて通してみて、最後に背バリとオモリの両方を付けて通しちゃう。ノーマルだと10のポイントしか探れなかったのが、背バリやオモリを使うことでオトリが入る場所やなじむ場所が変わるので、探れるポイントが30とか40になるんですよ。すべてのポイントにナワバリ鮎が付いていれば、ノーマルだと10尾しか釣れなかったのが、30尾、40尾になりますからね」
この方法だと、そんなに広い範囲でなくても数が出るので混雑河川や競技会でも役立つだろう。また、背バリとオモリの併用は、あまりする人がいないだけに効果的で、バババーンと連発することがあるそうだ。
ちなみにオモリを打つ位置は、釣れている鮎の大きさ分、ハナカンから離したところ。ここがいちばんオトリを操作しやすく泳ぎもいいからだ。オモリが近いとオトリの動きが制御されるようになり、あまりにも近すぎると棒のようになって泳がない。反対に広すぎるとオトリの自由度が上がりすぎて追われたときに逃げ切って掛からなかったりする。
野鮎が掛かるオトリのタナを
高感度の竿が教えてくれる
オトリを通すコースとともに大事なのが、オトリのタナだと田嶋は強調する。
「瀬の中は上の方の流れが強くてオトリが沈んでないと弱っちゃうんだけど、沈みすぎると掛かりが悪いんですよ。野鮎がオトリの上を泳いだり、後ろにくっつくだけになったりする。オトリの腹の下に野鮎が入って交差することで鈎が掛かりますから、そのスペースができるタナでオトリを泳がせないといけません」
こうしたオトリのタナは、水中糸にセットされた目印を見ていても分からない。手元に伝わる微かな変化に神経を研ぎすます必要があると田嶋はいうが、高感度の競技スペシャルV8引抜急瀬は、そうした情報を鮮明かつ明確に伝えてくれる。
「オモリを使ったときにオトリが沈み過ぎると、カンカンカンとオモリが底に当たる音がします。背バリの場合は、オトリの鼻先が底をこするゴソゴソゴソって音が手に伝わってくる。
そんなときは竿を少し起こしてやるとオトリのタナが上がり、いい位置に入るとシューッと軽くなってオトリが尻尾を振り泳ぎだすのが伝わってくるんですよ。そのあとにガーンと野鮎が掛かる。それと、野鮎がオトリに近づいてくるとフッと軽くなったり、コツンコツンやコソコソといった前アタリが伝わってくるんですよ。こんなときも竿を少し起こしてやるとガツーンときます。そんな水の中のできごとが手に取るように分かるので、釣果アップにつながることはいうまでもありません」
オトリの沈み過ぎが分かるからこそ
大きなオモリで獲りにいける
オトリの沈み過ぎが分かればまた、根掛かり防止にもなるし、根掛かりを恐れて人があまり攻めない深瀬に残された大鮎を3号や4号といった大きなオモリで獲りにいけたりもする。
休憩後の釣りはまさにその展開だった。流れが絞り込んだ深瀬を大きめのオモリで狙い25cmクラスをまじえて引き出していく。
「今日みたいな段々瀬は流れが強いのでオトリをしっかり押さえておく必要があります。早瀬クラスの竿だと、入ったり戻ったりと息をしてしまって、うまく収まりきらないポイントがたくさん出てくるので引抜急瀬がいいですね。野鮎も22、23cmになると力も重量もありますが、引抜急瀬だといいラインで2尾の鮎が浮いてきてスパッと抜けるのでテンポよく釣れるし25、26cmがきても問題ありません」
また、益田川のように大石が点在する川は、オトリを上流に向けて引き上げても大石に当たって引けなくなるポイントが少なくない。そんなときはオトリを石の上に持ち上げて落としたり、横にズラしたりといった細かな操作が求められるので、先調子の引抜急瀬が使いやすいのだそうだ。
左右や上下にオトリが動く
シモ竿の釣りで野鮎を誘発
この日の益田川は予想に反して野鮎の追いが渋かった。そのためシモ竿でオトリを動かして攻めるシーンが多々見られた。
立ち位置より穂先を上流に向けて構えることをカミ竿、下流に向けて構えることをシモ竿という。カミ竿はオトリの動きが抑制されるので、ここぞというピンポイントにオトリを止めて尾ビレを振らせたり、狙ったラインを引き上げやすいのが特徴だ。一方のシモ竿はオトリの抑制力が弱くなるため、オトリが左右に動いたり浮き上がりやすくなる。
「シモ竿にすることでオトリが浮いたり沈んだり、横へいったりロールしたりして野鮎を挑発するんですよ。ただシモ竿だと野鮎を掛けた時点で竿がのされた状態になりやすいのと、掛かりが浅くてバラすことも少なくないので、いつでも使うわけじゃない」
ちなみに、25cm以上の大鮎を狙うときは、オトリが動き過ぎると浅掛かりになって獲れないことが多いので、オトリを川底に落ち着かせて、動かしすぎないのがセオリー。これは田嶋さんがよく言われることのひとつだ。
追い気とキャッチ率で考える
ヤナギと3本イカリの使い分け
さて、釣果を伸ばすうえで、もうひとつ押さえておきたいのが鈎の使い分けだ。田嶋さんの鈎ケースには3本イカリと2本ヤナギが収納されている。よく掛かるときもあれば掛からなかったり、バラシが多発することもあるということで4本イカリは使わない。一方の3本イカリは平均して掛かるのと、すごくよく掛かるときがあるので多用する。3本イカリとヤナギの使い分けは次の通り。
「しつこく何度も追ってきて掛かるけれど、身切れでバレちゃうようなときはヤナギ。追いが悪くて最初の一撃で掛けないといけないときは3本イカリですね」
この日はてっぺん9号の3本イカリが状況に合っていたようで、追いの悪い野鮎を確実に仕留めていった。
「益田川の鮎は湖産の放流で卵を持ち始めているので、流れの本当に速いところよりも少し緩いところがよかったですね。鮎釣りで一番大事なのは、どこに追う鮎がいるのかを見つけることですよ。ダメなときでもやる気まんまんの鮎がいる場所があって、それを探し当てるのが最高に楽しい」
鮎の食み跡があるのはどこなのか、反応がいい石の色は濃いところなのか薄いところなのか、そして流れの速いところか緩いところかなど、いろいろ探っていって、追う鮎がいる場所を見つけたら、ノーマル、背バリ、オモリ、背バリ+オモリといったように攻め方のバリエーションで拾っていけば、釣果はきっと伸びるはずだ。