

私たち日本人は、高度経済社会や文明の発達により、過去にかけがえのない自然を破壊してきました。それもわずか20世紀の数十年間のことです。大気汚染、森林の破壊、海洋汚染など、文字通り空陸海に及んでいます。
河川、湖沼も例外ではありません。国土交通省の調査では全国に大小3万5千本の川があり、ダムの建設やコンクリート護岸などで大きく生態系が崩れてしまいました。もともと大自然は偉大で、淘汰の歴史があっても自然回帰の法則がありました。河川に棲むアユやモロコ、サンショウウオから、水生昆虫や水草まで激減した事実は、データで明らかです。まして日本古来の稀少種が絶滅に瀕し、
レッドデータブックが必要になってきたことはとても残念なことです。
心ある識者はこの現実を憂い、現状を打破しようと懸命に活動を続けられています。その先頭に立って物心両面にわたる献身的な活動をしておられるのが、「株式会社がまかつ」の藤井繁克会長です。日頃からその識見の深さと、何よりも魚たちに対する愛情の深さにも敬意を表し、感謝しています。
百種を超える稀少種もさることながら、現在ポピュラーにみられる魚種も、やがて将来そのような運命を迎えるのか、とても心配です。
鳥羽水族館を経営して50年、その調査と観察の結果、魚たちも人間と同様に親子や家族、健康管理、愛情、種の保存の智恵があり、時には人間が学ばねばならない数々の教訓を与えてもくれます。そして魚たちにも言葉があり、喜怒哀楽があり、さらに心もあります。まさに「魚心あれば水心」です。
人間が便利さを求めるため、洗剤や練り歯磨きを大量に使用して水質悪化を招いたのは明白です。上流や中流で汚染物質が入ると、下流や海が汚染されるのは当然なことです。童謡にある「兎追いしかの山、小ブナ釣りしかの川」はどこへいってしまったのでしょうか。
「国破れて山河あり」ではなく、「国栄えて山河滅ぶ」が実態なのです。魚たちが人間に解る言葉を発することができたら、さぞかし厳しい抗議の声が聞こえてきそうです。
サケはよく知られるように、川で産まれた稚魚は数年、海に下り、また母なる川に戻って来ます。アユは寿命が1年ですが、コイは長寿で150年も生きます。それら魚たちの育児や生活史の中から、人間は謙虚に学ばなければなりません。川や湖に魚たちがいなくなったとき、次は我々人類も滅亡するときなのです。
私たちは宇宙船地球号の住人として、「驕るなかれ」じっと耳を澄ませて魚たちの泣き声を聞き、自然復帰を祈りたいものです。