上村恭生「幻将天」

上村恭生

浅ダナのセット釣りと両ダンゴを得意とする。型より数重視で、その日、その池でもっとも釣れるパターンの解明に情熱を燃やす。G杯をはじめ、数々の大会で優勝・入賞を果たす生粋のトーナメンターである。京都府在住。

上村恭生「幻将天」画像1

 10数年ぶりに訪れた兵庫県丹波にある長谷大池釣り池センター。広告の撮影で緑のキレイな釣り場というリクエストであった。昔の記憶では、それほど簡単な釣り場のイメージはなかったという。ロケーション重視。苦戦は覚悟のうえ。

上村恭生「幻将天」画像2

「それにしても最近のがまへらは継ぎがいい」

 21尺の幻将天を継ぎながら上村がつぶやく。

 うきはディテールの14番。ハリはリフトの8号。ハリスは0.5号50㎝と65㎝。道糸は1.2号。大きいエサ、大きいハリ、重い仕掛けからのスタートで様子を見る。これでエサをいじっても合わないようであれば、ハリの号数を落としていく。
「50㎝そこそこのへらなら0.5号でなんとか獲れる」

 魚の引きにあわせて号数を変える人もいるだろうが、上村は落下するエサのスピードのイメージを最重要視する。
「へらは落下するエサに反応し、落下途中のエサにしか反応しない」

 ウキに対しエサが完全にぶら下がり、ハリスが垂直に伸びた状態では、まず、釣れることはないし、その前にエサが落ちる、あるいはへらの口に収まるように調整する。

上村恭生「幻将天」画像3

 夏の深ダナ狙いである。ベースとなるコウテン2カップ、粘りのでるダンゴエサのガッテン2カップ、粘りが出て重いダンゴの底釣り夏0.5カップ、水1.5カップ。これらをだいたい50回ほど練る。練り終わったらBBフラッシュを1カップ。全体に混ぜる。均一になじませ、練らないようにする。最初からBBフラッシュを入れて混ぜると粘りが出すぎてしまう。このBBフラッシュは、粘りのほかにふわっと膨らむ性質がある。体積が増す分、へらが吸い込みやすくなる。
「これで仕上がり度は8割。残りの2割の調整分は、1投ごとに調整する。まぁ、そんなすぐには釣れない。どんなに早くても10投はかかるだろう、最低でも」

 なじんだウキがツンと沈む。

 無意識にアワセた上村。

 幻将天が空を切る。

上村恭生「幻将天」画像4

「2投目からアタったやん。ええ感じのアタリやった」

 まだ寄せる段階のエサであるから食わせるには向かない。続く3投目。
「あ、上でエサがつかまった。本来ならもっと短い尺の竿がいい状況には違いない」

 ウキがなかなかなじまず、ようやく立ったウキをググッググッググッと力強く消し込んで1枚目、尺2寸。

上村恭生「幻将天」画像5

「10年前より型がいいね。数も多いんじゃないかな。何よりコンディションがいいし、活性が高い」

 最初に釣れた一枚は上の層にいる黒い魚。これは日焼けしている魚で、ハリを見る機会が多い賢い魚。もちろん、スレている。ふつうは釣りづらい魚で、いろんな技を駆使して短尺の竿で上層を狙うのが自然。それがエサを追って下の層まで潜ってついばむのだから、活性の高さがうかがえる。ただし、本来、狙っている魚ではない、とも付け加えた。

「長尺のメリットは、深いところにいるスレていない魚を狙えること」

 へらは下から上に向かって動く方が自然な動きで無理がなく、落下してくるエサに対し上を向いて捕食する方が違和感はない。下に向かっていくエサを追尾し、追いかけて食うのは不自然であり、釣れないわけではないが何度も再現するのはコントロールが難しいし、そもそもよほどコンディションがよくない限り、無理にエサを追うことがない。
「今使っている竿が21尺だから6.3m。ウキの位置がだいたい穂先から50㎝離れているから、約6mのタナを釣っている。へらぶなはどの層にも散っているが、いま、やろうとしていることは、7~8mのへらを6mまで寄せること」

 下の層から魚を連れてくることで、自然に上方向への移動になるし、上向きの姿勢をとることになる。そして、その魚はスレていない。深いタナにいるへらは日焼けしていないから銀白色が強く、釣られていない分、きれいな魚体になる。ただ、そのへらを集めるには、少々、時間を要する。とはいえ、魚の魚影、コンディション、サイズ、どれも当初想像していたよりもずっといいようだ。

上村恭生「幻将天」画像6